ご挨拶のアーカイブ
2023年5月
2023年4月27日にブリスベン総領事として着任しました、胡摩窪淳志(ごまくぼ・じゅんじ)と申します。
おそらく、この挨拶文を読んでくださっている皆様にとっては、世界的に見ても極めて理想的な二国間関係を築いている日本とオーストラリア、日本とクイーンズランド州の多岐にわたる関係の深さを列挙してもあまり驚きはないことでしょう。しかし、私にとっては、1960年代以降、資源、観光、農業といった当地経済の中心となる分野に多くの日系企業や団体、個人がオーストラリアに進出して、近年では住宅、医療、介護、交通、都市開発などの分野にも関係が広がって来ていることに、日豪両国は本当に緊密で奥行きのある二国間関係を築いているのだなと強く感じています。
特にここ数年、新しいエネルギー源として重要性を増す水素について、サンシャイン・ステートとも称される同州でも太陽光発電を利用したグリーン水素を生産する計画があり、日豪双方の企業が商用化を見据えた実証実験を進めていると聞いています。また、グリーンアンモニアの生産についてもプロジェクトが積極的に進められているようです。長年に渡って、我々日本人の生活や経済に欠かすことのできないエネルギー・鉱物資源や農産物等の安定供給に貢献してくれている豪州・クイーンズランド州ですが、このように脱炭素社会に向けた取り組みにおいても、わが国にとってのよきパートナーとしての重要性はますます高まってきています。
最近の特筆すべき特徴は、安全保障分野での関係の深化でしょう。厳しさを増すインド太平洋の安全保障環境の下で、人権、法による支配、民主主義等、価値観を同じくし、共通の関心事項が多い日豪両国は、この分野でも結びつきを強めて来ています。その一例がここクイーンズランド州においても見られます。2015年、豪州と米国の間で実施されている最大級の共同軍事演習に我が国も初めて招かれ、以降、この訓練への参加が続いています。
クイーンズランド州とわが国の関係は、もちろんこうした国レベルでの政治経済関係のみに依拠しているわけではありません。その良好かつ強固な関係の基盤となっているものが、一般市民レベルでの活発で豊かで多様な交流です。クイーンズランド州とわが国の間には30の姉妹・友好都市関係があり、経済、教育、文化等の広範な分野で交流が行われてきました。私も当地への赴任前、こうした数ある姉妹都市のうち、埼玉県、大阪府及び神戸市を訪問しましたが、日本側関係者が一様に感じているクイーンズランド州の人々のオープンでフレンドリーな国民性への親近感と交流強化への熱い思いをお伺いし、心強く感じた次第です。
こうした日豪友好関係の基層となるものの一つが、オーストラリアにおける日本語教育なのだろうと思います。国際交流基金の調査によると、オーストラリアでは小学校から大学まで約41万人の日本語学習者がおり、人口10万人当たりの日本語学習者数で同国は世界一とのことです。その中でクイーンズランド州は15万人と最多を誇っています。
今回私は、このような素晴らしい国の、誰もが訪れたいと願う魅力的なクイーンズランド州にある日本国総領事館に総領事として赴任できたことを、大変光栄でありがたいことと心から感じています。
私自身はこれまでフランス語圏の勤務が長く、フランスとアフリカ諸国を中心に勤務してきたほか、中東にもおりました。しかしアジア太平洋諸国は、本省経済局や国際協力局勤務時代に出張で訪れた程度であり、オーストラリアは2007年の豪州APEC(アジア太平洋経済協力会議)の時に計4回、来訪したくらいです。
ただ、はるか昔の学生時代に、日豪学生交換連盟(JASEF)の主催する1か月の観光を兼ねた英語研修に参加してオーストラリアを訪れたことがあり、それが私の初の海外旅行でもありました。異国に来た緊張感と強い好奇心でハプニングもいろいろありましたが、青春時代の大変良い思い出となっています。今回数十年ぶりに再びこの地に戻って来られたことに、いくらか甘美な感傷に浸りつつ、しかし今度は重責を伴っての赴任となったことに、当時とは全く違った緊張感と使命感であらためて身が引き締まる思いです。
クイーンズランド州に暮らす約2万8千人の在留邦人の皆様、そして旅行、留学、ビジネス等で当地を訪問される皆様の安全と安心を確保することは、総領事館の最優先事項です。コロナが落ちついてきた今、日本とクイーンズランド州間の人の往来も劇的に回復してきており、今後ますます増加していくものと期待しています。
当館としては、皆様のご意見も伺いながら、安心と安全、利便性のある領事サービスの向上に努めてまいりますので、お気づきの点、当館としてお役に立てそうなこと等がありましたら、お気軽にご相談いただければ幸いです。
在ブリスベン日本国総領事
胡摩窪淳志